早稲田大学狂言研究会の日記

早稲田大学狂言研究会 公式ブログ

  • 投稿者:きんに君

最近更新が再び滞っていました。書き溜めていたものもあるので、追々アップしていく予定です。

銕仙会定期公演
2007年1月13日(土) 13:30開演
宝生能楽堂 座席:脇正面を‐5

『翁』

翁…観世銕之丞
三番叟…野村万蔵
千歳…小早川康充
面箱持…野村太一郎
笛…一噌庸二、小鼓頭取…観世新九郎、脇鼓…観世豊純、鳥山直也、大鼓…柿原弘和
後見…長山禮三郎、観世榮夫
地頭…若松健史


 三番叟の最中、観世豊純師が床几からくずれ落ちるというアクシデント。しかも二回も。最終的には床几に戻らずに正座して打っていました。どうやら発作のようで、何とかやりおえて自力で戻ることは出来ましたが、この後どうなったのか心配です。

 千歳の康充くんは、二年前に国立能楽堂での『船弁慶』の子方で見て以来注目していた人です。今の子方の中ではずば抜けて上手いと思います。今回も期待に違わない舞でした。型はしっかり決まっていて、それでいて変にませた所もない、素直な千歳でした。
 これからは、変声期を迎えて苦労すると思いますが、それでもずっと追跡していきたい能楽師です。

 万蔵師は、与十郎だった頃に比べると顔つきが福々しくなり、風格が出てきたようです。
 師の三番叟は、元日にテレビで観て以来二回目です。万蔵家は万作家と同系ですが、写実的な洒脱さを持ち味とする万作家に対し、式楽的要素が強く、それは、三番叟に象徴的に現れていると思います。
 テレビで観た時は絶好調で、神がかかっていると言ってもよかったのですが、今回は今ひとつ神が乗り移っていませんでした。これは想像なのですが、豊純師のアクシデントを見て調子が狂ってしまったのではと…


一調『小塩』観世榮夫
太鼓…金春惣右衛門


能『屋島大事 奈須与市語

シテ…山本順之
ツレ…浅見慈一
ワキ…宝生閑
ワキヅレ…則久英志、大日方寛
アイ…野村扇丞
笛…松田弘之、小鼓…曽和正博、大鼓…國川純
後見…清水寛二、浅見真州
地頭…野村四郎


 前場がこんなに長いとは思わなかった。疲れのあまり、アイの語りが始まるまでは、かなりの部分をウツラウツラしていました。コンディション調整に気を使っておけば、起きていられたのでしょうが…
 アイの扇丞師は、語り分けに写実さと生々しさがあって、まるで落語のようでしたが、力一杯の芸で良かったです。
 「奈須与市語」を能の中で見るのは初めてでしたが、能全体から意外と浮き上がっていないのが面白いですね。
 
 前日に小舞の『八島』の稽古を着けていただいたので、後場はしっかりと見届けました。最後にシテが幕に走り込んで、ワキが留め拍子を打っていました。これは、夜が明けて屋島の戦いの幻影が現実の風景に戻っていることにワキが気付いたのだと、素人の頭で考えるのですが、どうでしょうか?


 この時の宝生能楽堂のコンディションは、囃子方には最悪だった様です。屋島の時、小鼓はしきりに皮をなめていました。
 厳しい寒さは乾燥を招くのですね。皆さんも火事にはご注意ご注意。