早稲田大学狂言研究会の日記

早稲田大学狂言研究会 公式ブログ

−投稿者:筋太郎

極度の不定期更新と化しています。
皆様、何卒、なにとぞ、ナニトゾお付き合いくださいm(_ _)m

「宝生夜能」
2005年8月31日(水) 午後六時より
宝生能楽堂にて

能『春栄
シテ…水上輝和 ツレ…和久荘太郎 子方…佐野幹
ワキ…森常好 ワキツレ…舘田善博
アイ…深田博治
大鼓…上條芳暉 小鼓…鵜澤洋太郎 笛…藤田次郎
後見…武田孝史、渡邊茂人
地謡…亀井雄二、大友順、山内崇生、東川光夫、今井泰行、近藤乾之助、大坪喜美雄、金井雄資

狂言柑子
シテ…野村萬斎 アド…石田幸雄

能『船弁慶
シテ…野口聡 子方…前田尚孝
ワキ…高井松男 ワキツレ…則久英志、梅村昌功
アイ…高野和
大鼓…大倉栄太郎 小鼓…森澤勇司 太皷…金春國和 笛…松田弘
後見…寺井良雄、前田晴啓
地謡…東川尚史、小林晋也、水上優、佐野登、登坂武雄、亀井保雄、當山孝道、波吉雅之


『春栄』
舞が始まるまでが異様に長い曲です。舞に入るまでの導入部分が全体の九割くらいはあったでしょうか。
導入部分は、語りを中心に展開します。戦いで敵方の武将(ワキ)の捕虜になった弟(子方)に会いに、兄(シテ)が身分を隠してやってきます。武将は捕虜を斬首にしようとするのですが、あまりに彼が美しく、またさっぱりした性格であるので、憐みの情が起き殺すことが出来ない。弟は、会いに来たのが兄と発覚すれば同じく殺されてしまうと思い、家来だと兄のことを偽る。兄は、弟の心配りを察し、弟が処刑される前に自ら切腹して果てようとする。武将は兄弟愛に感動するも、鎌倉からの命令には逆らえず、兄弟を処刑する決心をします。と、そこで弟の放免状が届き、兄弟は死刑を免れ、めでたしめでたし。喜びの舞が始まります。
語りを楽しめれば、この能は面白いのだろうけど・・・
まだ見るには早すぎたのでしょうか?

『柑子』
この曲を見るのは、第一回蝉の会で成城の先輩がやったのを見て以来二回目です。
「こんなに面白かったんだ!」と改めて認識。
『春栄』と同様、語りが大きいウェイトを占める曲です。太郎冠者(シテ)が主人(アド)に、珍品の三つ成り柑子(一枝に三つなっているミカン)の行方を言い訳するのですが、この部分を面白く語ることが大事です。
笑い・泣きなどの感情表現もあるので、語り物の中では易しい方に入ると思いますが、でもそれが実に良かった。
舞台の上で演じられている間、見所の空気がぱっと明るくなるのがわかりました。
萬斎さん、石田さん共に最高でした。

船弁慶
この曲を見るのは二回目です。
一回目は、2月12日の国立能楽堂で、シテ野村四郎、ワキ福王茂十郎、アイ山本東次郎という顔ぶれでした。
それにくらべると、今回は少々見劣りがしたような気がします。
じゃあ、何が原因かと言われると困るのですが、あえて言うなら子方ではなかったかと思います。
子方は小学校高学年ぐらいの子で、子方にしては大きすぎるような気がしました。
では、大きい分だけうまいのかというとそうではなく、思ったほどに声が出ておらず、張りも少ないような気がしました。
それから、『春栄』の子方にも言えるのですが、世間では美しいといわれる宝生流の謡が、子方が謡うと何か違和感がある、そう感じました。

船弁慶』は好きな曲です。これからもたくさん見て、比較検討など出来れば楽しいと思います。