早稲田大学狂言研究会の日記

早稲田大学狂言研究会 公式ブログ

鑑賞記Vol.4

鑑賞記録
「研究会」(観世流
平成17(2005)年7月20日 午後五時半〜 観世能楽堂

番組
能『菊慈童
シテ:清水義也 ワキ:野口能弘 ワキツレ二人(クレジットなし)
囃子方・・・笛:一噌隆之 小鼓:森澤勇司 大鼓:高野彰 太鼓:三島卓
後見 高橋弘・観世清和
地頭・・・寺井栄 地謡・・・林宗一郎、木月宣行、藤波重孝、川原恵三、吉井基晴、観世芳宏、津田和忠

狂言骨皮
シテ・住持:野村萬、アド・新発意:野村扇丞
小アド・檀那衆:山下浩一郎、小笠原匡、野村万蔵

仕舞
楽天』武田宗和、『蝉丸 道行』吉井基晴、『小鍛冶 キリ』林宗一郎
地謡:角幸二郎、上田公威、岡久広、大松洋一

(十分休憩)

能『花筐
シテ:観世芳伸 ツレ:浅見重好 ワキ:殿田謙吉 子方:観世喜顕
囃子方・・・笛:藤田次郎 小鼓:鵜澤速雄 大鼓:亀井忠雄
後見:武田尚浩、坂井音重
地頭:武田宗和 地謡:武田宗典、坂口貴信、北浪貴裕、藤波重彦、下平克宏、関根知孝、関根祥人


『菊慈童』
見ていて感慨は特にありませんでした。ワキの声がかなり響いていたのと、囃子方に熱が入っていたのが印象的でしたが。

『骨皮』
 これは狂言にしては結構えぐい曲です。古語とは言え、露骨な性表現が出てくるので。今聞く私たちにはそれほどでもありませんが、初演当時は拒否反応を示す人もいたかも。
 新発意は融通も利かせずに老僧から教わったことを鵜呑みにして言いますが、案外バカとはいえないと思います。いい傘を檀那に貸してあげているし、言ってることは師匠よりも立派ですし。
 萬さんはやはり上手いです。台詞回しも心地よいし、間の取り方も最高。見習いたいくらいです。
 扇丞さんは、動きの切れが良すぎてバレエみたいだったのが少し残念でした。台詞回しは、萬さん以外だと小笠原さんが良かったかな。

仕舞
小鍛治は、観世会の皆さんの話にはよく出てきますが、実際に見るのは初めてでした。跳び返りが二回連続であります。見ているほうは面白いけど、やるのは大変そう。

『花筐』
 能の醍醐味は後場にあるのだとは思いますが、同時に導入としての前場の重要さを強く感じました。
前場では、照日ノ前(シテ)が、男大迹皇子からの「皇位継承につき大和へ帰らねばならない」という別れの手紙と花筐(花かご)を、皇子の使者(ワキツレ)から受け取ります。(このワキツレは、見たところ間狂言とさして変わらぬ役割を果たしているように見えます)
照日ノ前(シテ)が皇子からの手紙をひざまずいて読みます。そして、読み終わってから立ち上がるまで、ひざまずいていた短い間に、私は確かに、彼女の心にあふれる悲しみを感じ取ったのです。時間としては長くなかったのに、私にはずっとひざまずいていたように感ぜられました。
今まで能は何回か見てきましたが、このような感じを持ったのは初めてでした。おそらく前場は十分ぐらいだったでしょうが、この導入部分が短いながらも美しかったからこそ、照日と継体天皇となった皇子(子方)との再会を描く後場が(前場に比べれば少々退屈でしたが)より切実に感じられたのかも知れません。

萬さんの『骨皮』目当てで行った公演でしたが、この能が観られたのが今回一番の収穫でした。